耳抜きってなに?
飛行機や新幹線の機内や、トンネルの中や山の上、そして海やプールでの潜水時、「耳が遠くなった?」「耳の中が痛い!」こんな経験ありませんか?ダイビングでおなじみのアレ、そう「耳抜き」です。
前回の「サーファーズイヤーってなに?」に引き続き、今回も耳鼻咽喉科医の森下先生に解説していただきます!(今回も有難うございます!)
耳抜きとは?
耳抜きとは、簡単に説明すると、鼻から耳へ空気を送ることです。飛行機の搭乗中やダイビング中に耳がツーンと詰まった、塞がった感じ(耳閉感)がしたときに耳抜きをすると解消されます。
今回は、耳抜きの仕組みや耳閉感が生じる原因、耳抜きのやりかた、注意点を解説します。
耳抜きの仕組みと耳閉感の原因
耳抜きについて詳しく説明するためには、耳の構造を理解する必要があります(図1)。耳は、耳の穴から鼓膜までを外耳、鼓膜の奥にある空間を中耳、さらに奥にある音を電気信号に変換する装置を内耳といいます。中耳には音を内耳に伝えるための耳小骨があり、鼻の奥と「耳管」という管を通じてつながっています。この「耳管」は普段は閉じていて、必要時に開くようになっています。耳管の機能は年齢によって異なり、幼少期は未熟ですが、10歳前後には成熟します。
図1:耳の構造
通常、中耳内の圧力と中耳外の圧力(外環境圧)の均衡(圧平衡)が保たれています。しかし、飛行機の搭乗やダイビングでは、外環境圧が急激に変化します。すると、中耳内外の圧平衡が崩れてしまい、鼓膜が外側に押し出される、あるいは内側に凹むため、耳閉感を生じ、ひどい場合には痛みを感じます。その際、外環境圧の空気を鼻から耳管経由で中耳に送ることができれば、中耳内外の圧平衡を元に戻すことができます。
また、滲出性中耳炎という中耳に水がたまる中耳炎でも耳閉感が生じます。滲出性中耳炎は耳管機能が低下した時に起こりますが、これにも耳抜きが有効です。
通常、中耳内の圧力と中耳外の圧力(外環境圧)の均衡(圧平衡)が保たれています。しかし、飛行機の搭乗やダイビングでは、外環境圧が急激に変化します。すると、中耳内外の圧平衡が崩れてしまい、鼓膜が外側に押し出される、あるいは内側に凹むため、耳閉感を生じ、ひどい場合には痛みを感じます。その際、外環境圧の空気を鼻から耳管経由で中耳に送ることができれば、中耳内外の圧平衡を元に戻すことができます。
また、滲出性中耳炎という中耳に水がたまる中耳炎でも耳閉感が生じます。滲出性中耳炎は耳管機能が低下した時に起こりますが、これにも耳抜きが有効です。
耳抜きのやりかた
1. バルサルバ法
鼻を指でつまみ口を閉じた状態で、息を押し出す方法です。鼻や口から息を出そうとしても塞がっているため、鼻の奥の圧力が高まり、耳管が開いて中耳に空気が送り込まれます。上手くいくと「バリバリ」や「キュー」といった音が聞こえます。最も代表的なやりかたですが、この方法ができない人は12%程度存在し、女性に多い傾向があります。
2. フレンツェル法
のどの声帯を閉め鼻と口を塞ぎながら、呼吸を止めた状態で舌の根元を喉の奥へ送り込むように動かすことで、鼻の奥の圧力が高め中耳に空気を送り込む方法です。
3. 嚥下法、あくび
嚥下(飲み込む)動作やあくびによって、耳管が開き空気が中耳へ送り込まれます。この方法は、普段の飲食時やあくび時に自然と行われています。耳管機能の個人差により、上手くいく人といかない人がいます。
耳抜き時の注意点
バルサルバ法やフレンツェル法による耳抜きでは、鼻から耳に勢いよく空気が送られてしまうと、めまい、難聴、耳痛などの症状をきたす耳気圧外傷(※1)が生じる恐れがあります。急に圧力をかけるのではなく、少しずつ圧をかけるようにしましょう。また、頭を下に向けた姿勢では耳抜きに必要な圧力が高くなるため、耳気圧外傷が生じやすくなります。頭を上に向けた姿勢で行いましょう。
風邪を引いている時は、耳抜きできない場合が多いんです。鼻やのどの炎症によって、耳管粘膜がむくみ、耳管が狭くなってしまうからなんです。耳抜きが必須なダイビングは、風邪を引いている時には中止した方がよいでしょう。
※1:耳気圧外傷とは、中耳に高い圧力がかかることで起きる病態です。軽度のものでは鼓膜の充血や耳閉感が生じます。重度のものでは、鼓膜に穴があく状態(鼓膜穿孔)や外リンパ瘻になります。外リンパ瘻とは、内耳の中にあるリンパ液が漏れ出る状態で、めまいや難聴を引き起こします。
まとめ
今回、森下先生に、耳抜きの仕組みや耳閉感の原因、耳抜きのやりかた、注意点を解説していただきました。ダイビングでは必須の手技ですので、これからダイビングを行おうとする人はぜひマスターしていきましょう。
-耳鼻咽喉科医-
森下 大樹 先生
聴覚や耳科手術を専門とする耳鼻咽喉科専門医。補聴器相談医、 補聴器適合判定医師、身体障害者15条指定医(言語・そしゃく機能障害、音声機能、聴覚・平衡機能障害) 、難病指定医
参考文献
1)北島尚治:ダイビングと耳鼻咽喉科.JOHNS 36(5): 591-595, 2020.
2)三保仁:耳・副鼻腔に関する潜水安全基準の提唱.日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 43(2): 67-70, 2008.
3) 大久保 仁:中耳腔の換気―空洞換気の知識と理解―.総合医学社: 168, 1990.
4)北島尚治:飛行機やダイビングで耳ぬきができない人に対する上手な指導法や対応はありますか?.JOHNS 36(9): 1074-1075, 2020.
5)北島尚治:Otovent(R)の有効性.JOHNS 37(3): 289-292, 2021.