サーファーズイヤーってなに?

体の芯まで冷えるような寒い日が続きますね。
皆さまいかがお過ごしですか?
凍えるような気候の中、波を求めて沖へ出る。そう、サーフィンとはそれくらい魅力的なスポーツ、いや、ライフスタイルですよね。

今回はこの時期にぴったりの”アイツ”のこと、そうです。「サーファーズイヤー」について耳鼻咽喉科医の森下先生に解説していただきます。(これは貴重ですね!)

サーファーズイヤーの正式名称

サーファーズイヤーの正式名称は、外耳道外骨腫といいます。
外耳道に長期間の冷水刺激が加わることにより、外耳道に骨の盛り上がり(骨増殖性隆起)が生じた状態です。
漁師や職業ダイバー、マリンスポーツ愛好者にみられ、特にサーフィンを行う人に多いため、サーファーズイヤーと呼ばれています。

なんとサーフィン大会参加者の約60%にサーファーズイヤーを認めたという報告があるくらいなんです。サーフィン経験年数や頻度が多いほど、また水温の低い地域ほど高度な病変ができやすいと言われています。
そのほかに、サウナで暖まった後に、冷水に飛び込む習慣があるサウナ愛好家にもできることがあります。

症状

初期には、ほとんど症状がありません。
外骨腫が大きくなると、外耳道が閉塞し難聴をきたします。外骨腫自体で閉塞しなくても、外耳道が狭くなれば耳垢がたまることで難聴になります。
そのほかには、外耳道炎(※1)、耳の痛み、耳垂れ(耳漏)、かゆみ、耳鳴、耳から水が抜けにくいといった症状がでることがあります。これらの症状は、必ずしも外骨腫の程度とは相関しません。
外骨腫がかなり大きくなっても、難聴を訴えないことはよくあります。

※1:外耳道炎とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの外耳道の皮膚に炎症を起こした状態です。症状として、耳垂れ、痛み、かゆみが現れます。

診断

 耳鏡や内視鏡での視診では、外耳道に白色の球状隆起がみられます。触診によって骨の固さであるかを確認します。側頭骨CT検査では、外耳道の骨性隆起の有無をチェックします。

治療

 治療は、手術により外骨腫を摘出することです。具体的には、耳用ドリルやノミで外骨腫を削りとります。通常は全身麻酔下で行われます。
手術の適応について、外骨腫による外耳道の狭窄が1/3未満の場合、手術の適応はありません。1/3以上の狭窄で、外耳炎や難聴をきたす場合は手術が考慮されます。
手術費用については、保険上の診療報酬として、外耳道骨増生(外骨腫)切除術=101,200円(10,120点)と定められています。自己負担が3割の方は、30,360円の計算です。実際の医療費は、手術費用に薬剤や麻酔等の費用を加えたものになります。自己負担分は高額療養費制度(※2)の還付の対象です。詳しくは厚生労働省の高額療養費制度のページをご参照ください。
手術したとしても、原因である頻回の冷水刺激が加われば、容易に再発します。そこで、次の項目で解説する予防が必要となります。

※2:高額療養費制度とは、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担を更に軽減するしくみも設けられています。

予防

 サーファーズイヤーの発生を防止するには、外耳道へ冷水刺激を避けることが重要です。また、濡れた状態で風に吹かれると気化熱でさらに冷えることになるため、冷風刺激を避けることも有効です。具体的には、耳栓の使用により外耳道への海水の浸入を防ぎ、風による気化熱の冷却効果を和らげます。

しかし、通常の耳栓では水を完全に遮断しますが、同時に音も遮断してしまいます。これではサーフィン中は聞こえづらく、不便が生じます。海水を遮断しながらも周囲の音は遮断しないタイプの耳栓(サーフイヤーズ:SurfEars)であれば、サーフィン中も聞こえますので、不便なく楽しめます。これから本格的にサーフィンを始めたい人にはお勧めですよ。
 サーフィンに限らず、冷水温でのスポーツは日頃から耳栓を使用した方がよいでしょう。

まとめ

 繰り返す冷水・冷風刺激が原因となるサーファーズイヤーについて耳鼻咽喉科医の森下先生に解説していただきました!正しい知識を持って予防に努め、サーフィンやマリンスポーツを楽しみたいですね。
森下先生有難うございました!

医師監修-サーファーズイヤーってなに?

-耳鼻咽喉科医-
森下 大樹 先生
聴覚や耳科手術を専門とする耳鼻咽喉科専門医。補聴器相談医、 補聴器適合判定医師、身体障害者15条指定医(言語・そしゃく機能障害、音声機能、聴覚・平衡機能障害) 、難病指定医

参考文献
1)中西悠:サーファーズイヤーの取り扱い.日本耳鼻咽喉科学会会報 115(12): 1054-1055, 2012.
2)池田怜吉,日高浩史:水中スポーツとsurfer’s ear.JOHNS 36(5): 599-603, 2020.
3)小川洋:サーファーズイヤー.日本医事新報 (4973): 51-51, 2019.
4)熊川孝三:スポーツと難聴.MB ENTONI (243): 41-46, 2020.
5)Nakanishi H,Tono T,Kawano K:Incidence of External Auditory Canal Exostoses in Competitive Surfers in Japan.Otolaryngol Head Neck Surg 2011;145(1):80-85.